ばなななが・プログラム

                                  

April 2004                      No.1

『バナナナガ』とは、南部アフリカにある小さな国ボツワナの現地語で、「自然の中の子どもたち」という意味です。このプログラムは、アメリカの俳優ポール・ニューマンが進めている、「子ども時代を奪われた子どもたちに子ども時代をプレゼントしよう」という趣旨の子どもたちのための運動に触発されて始まったものです。

子ども時代を奪われた子どもたち

先進国、開発途上国を問わず、現在、病気と闘っている子どもたちや、おとなからの虐待を受けている子どもたち、いわゆる「子ども時代を奪われた子どもたち」が数多く存在します。ポール・ニューマンが始めたこのプログラムは、多くのアメリカの子どもたちが当然のように楽しむ屋外のキャンプを、ガンやエイズという重篤な病気と闘って、その参加が制限されている子どもたちにも楽しんでもらうことを目的としています。ポール・ニューマンは、こういった子どもたちのために財団を立ち上げ、自分自身の似顔絵をパッケージにしたサラダ・ドレッシングなどを販売し、全米にいくつもの医療設備の整ったキャンプを設立し、闘病する子どもたちを米国国内からでなく、外国からも無料で招待しています。多くは死期の迫った子どもたちです。

子どもが子ども時代を楽しむ。自分がしていることが子どもに与えられた特権だという意識もない子どもたちが、笑い、学び、泣き、怒り、そして成長していく。そういった幸せな期間を経ておとなになることができない子どもたちに対して私たちがすることがあるのではないでしょうか。たとえ恒久的な環境でなくても、子どもたちには、思いっきり楽しい思いをさせてあげたい。それが、毎日でなくとも、たった一日でも、一週間でも、思いやりのある自分のことを真剣に考えてくれているおとなたちのもとで、幸せな子どもの時間を持つことができれば、その子はきっとその思い出を大切にし、幸せなおとなになれるでしょう。不幸にもおとなになる前に命に限りがきたとしても、です。

命に限りがあるから、エイズにかかっているから、ガンにおかされているから、子どもが子どもとして楽しい思いをせずに毎日を過ごすとことを仕方がない、としてしまうのはまちがっています。

イラクやパレスティナやアフガニスタンやリベリアで戦争や武器にふるえる子どもたち。トーキョーの片隅で、携帯電話欲しさに援助交際をしてしまう女の子たち。そして、マラウィや南アフリカの親をエイズで亡くし、明日の食べ物にも困る孤児たち。私たちのいま生きている時代は多くの困難を抱えていて、くじけてしまいそうです。しかし、おとなの私たちがくじけてどうしますか。私たちも生きていかなくてはいけないけれど、世界の困難な現実を生きている子どもたちに声をかけ、気持ちを伝え、何か行動をしなければ、正直言って目覚めが悪いでしょう。

子ども時代を奪われた子どもたちに子ども時代をちょっとでも味わってもらう行動を起こすことは誰にでもできるはず。私はこれからそういう活動を中心にしていきます。ぜひ、一緒に行動していきましょう。

アフリカの子どもたちにアフリカを!

「アフリカの子どもたちにアフリカを!」――これってどういう意味?と思われるでしょうか。日本のおとなでも、子どもでも、「アフリカのイメージとは?」と聞かれると、100%に近い割合で、野生動物の存在をあげます。ところが、アフリカの多くの人々にとって、野生動物はとても遠い存在なのです。ましてや、エイズ孤児たちの毎日は、食べ物を確保するのさえ難しいのです。そういった子どもたちを、アフリカの大切な観光資源であるサファリパークに招待し、野性動物の素晴らしさ、キャンプの楽しさ、手を使い、体を使い、思いっきり楽しい何日間を過ごしてもらうのが、このバナナナガ・プログラムです。

このプログラムは前出のポールニューマンの財団、Hole in the Wall Camps(http://www.holeinthewallcamps.org/)スタッフの教育、また財政面も支援しています。南部アフリカ地元のこういったサファリキャンプを運営する団体も観光客の足が遠のく時期に、施設の提供などを申し出てくれました。こういった多方面の支援により、ボツワナで始まったこのプログラムは、「アフリカの子ども時代を奪われた子どもたち」に、少しずつではありますが、確実に彼らの子ども時代を取り戻しつつあります。一人でも多くの子どもに「アフリカ」を「子ども時代」を楽しませてあげたいと切望します。

 

「アフリカの子どもたちにアフリカを!」には、確かに悲しい背景があります。でも、だからこそ、日本のおとなたち子どもたちを巻き込んで、地球市民として私たちがアフリカの子どもたちがアフリカの動物や素晴らしい自然を楽しめるような環境を整える努力をすることがいいのではないか、と思うのです。飛躍している論理かもしれません。ただ、日本のおせっかいなおとなたちがアフリカの子どもたちにアフリカを取り戻す努力をすることで、かえって、日本の寂しい子どもたちに教えるものもあるのではないか、と考えています。

 

昨今、日本の子どもたちの犯罪や行動に日本中のおとなたちがあたふたしています。子どもの犯罪の原因はその子どもを取り巻くおとな社会が原因なのに、当事者である子どもばかりを責めて何になるのでしょう。罪を犯した子どもたちには、その犯罪を繰り返させないためのケアが必要です。では、そうでない子どもたちはどうでしょう。例えば不登校の子どもたちやその予備軍の子どもたち。彼らは自分たちの体を張って、社会の矛盾や学校の偽善性を指し示しているとしか思えません。彼らの目に身近なおとなは、おとなの社会は魅力に富んだものでしょうか。子どもの目に映っているおとなの姿勢がいまこそ問われているのではないでしょうか。

 

日本の子どもたちに今必要なのは、はっきりと自分の意思を持ったおとなが、自分とは一見関係ないと思われる世界の不幸な現状に対して一生懸命その状況を変化させる行動を実際に目の前で見せてやることだと考えています。子どもたちの「どうしてそんなことをするの?」という問いかけを引き出したい。そして、その問いに、「だって、不公平でしょう? おかしいでしょう? だからね、そのおかしいことを直すのがおとなの役目なんだよ」と伝えたいのです。

 

川田龍平氏と保田行く雄弁護士との出会い

3月の帰国のハイライトは、岩辺泰吏先生のお骨折りで、薬害エイズ裁判を闘った川田龍平氏とその弁護士、保田行雄先生にお目にかかれたことでした。18歳で実名を公表し裁判を闘った川田氏のことは、メディアや書籍を通して彼の主張に耳を傾け応援していました。実名公表から9年。すてきな青年に成長した彼の穏やかな物腰、エイズ裁判のことを話すときの彼の厳しい表情を身近で見せてもらい、あらためて、彼のこれまでの人生のいろいろに「がんばってきたね」と声をかけたくなりました。現在、彼は長野県の松本大学の講師をしています。生徒を連れて裁判の見学にも行くとか。これからの彼の活動に期待しています。

さて、弁護士、保田先生の事務所にも伺い、いろいろお話を聞きました。バナナナガ・プログラムにも大変興味を持っていただき、なんらかの形でご支援していただけそうです。保田先生の鋭い目と率直で気さくなお人柄が印象的でした。

 

日本バナナナガ・プログラム応援団

昨年の11月、私が日本を離れる前、何人かの人々がこの活動を支援しようと東京・新宿に集まってくださいました。その席で、東京大学大学院教授汐見稔幸氏が「応援団長」ということで、この日本応援団を結成しよう、という動きになりました。

 

具体的な事務局の運営など、まだ何も具体的な動きにはなっていません。いろいろな方のお知恵を借りながら、じっくり息の長い活動として進めていきたいと考えています。今年の夏(日本の冬)のキャンプまでに何とか形を整えて、日本からもキャンプの視察を計画したいと考えています。皆さんの中にこの活動に賛同し、お力、時間、お知恵、資金、その他何でも、お貸しいただける方がいらしゃればとっても嬉しいです。どうぞお声をおかけください。

 吉村峰子